企業調査の方法:5分でサクッと検索
企業の公式ホームページを見て、その企業のことを分かったつもりになっていませんか?
それでは「面接で自己PRを見てそのまま採用する」ようなものです。客観的な情報で裏を取りましょう。
あまり知らない企業名をよく目にすることは日常茶飯事。そんなときにサクッと調べる方法があれば便利ですね。今回は日米の上場企業に的を絞り、客観的な情報をすばやく手に入れる方法を解説します。5分でもけっこう調べられますよ。
目次
目次
1. 日本企業
1-A:ジャパンナレッジ内の四季報(有料)
1-B:日経電子版(有料)
2. 海外企業:Wall Street Journal(無料)
1. 日本企業
すべての国内企業を無料で調べるサイトがないか調べたのですが、どれも今ひとつでした(例:Yahoo!ファイナンス、みんかぶ)。ジャパンナレッジを契約している翻訳者が多いので、まずは四季報の活用方法からご説明します。
1-A:ジャパンナレッジ内の四季報(有料)
ジャパンナレッジには四季報が掲載されていて、全上場企業の情報が入ってます。
仮に「翻訳センター」について知りたければ、そのまま入力するだけ。
上の数項目を見るだけで概要がつかめます。ある程度知りたいだけなら、5分で十分。
・【特色】項目
大手翻訳会社であり、特許、医薬、工業の順に売上高が高そうな印象を受けます。
買収した子会社で通訳事業に力を入れ始めている様子。
・【連結事業】項目
翻訳が売上の76%を占め、丸括弧で示された利益率は7%で稼ぎ頭であること分かります。
通訳は売上の5%を占めて利益率はマイナス14%の赤字、コンベンションもマイナス19%と大幅な赤字。
・【上振れ】/【提案力】項目
コロナ禍の低迷から回復基調にあり、オンライン化などIT化で挽回を図っている模様。
時間に余裕があれば下の項目も見ます。株主構成を眺めると、あることに気づきました。
<株主構成>
筆頭株主が医療分野のエムスリーで、2割近い株式を保有しているのです(2010年より資本・業務提携)。エムスリーはオンライン診療などで急進したベンチャー企業。翻訳センターが医療分野を重視している姿勢が伝わってきます。
ちなみに、ソニーはエムスリー株の1/3を保有しています。ということは、翻訳センターの上にはうっすらとソニーの陰があるのです。知ってましたか?私は今日の今日まで知りませんでした。なかなかホームページだけでは気づきにくいですね。
1-B:日経電子版(有料)
日本企業を調べるとき、私はいつも日経電子版を見ています。実はこれだけで十分です。
ただし、月4千円… 日経新聞の記事は読み放題ですが、万人に”必須”とまでは言えません。
<日経電子版の企業ページ>
まずは最上部の説明で業容をざっくりと把握し、右下の「5年」をクリックして過去の株価を見ます。株価は企業の成長を如実に物語る指標ですから。次に「企業概要」をクリックしてスクロールすると、下記の概要が登場します。
眺めるだけで雰囲気が伝わりますね。創業が「メディカル翻訳センター」と分かり、先ほどのエムスリーとの業務提携もつじつまが合います。
最後に、トップ画面の下へスクロールして「決算サマリーVisual」を見ると、競合他社の比較情報が見れます。
企業の公式ホームページに競合他社との比較はないです。業界での立ち位置を知る重要な手がかり。
翻訳業務の上場企業が少ないので「間接業務代行」のカテゴリーになり、いささか的外れなのは残念。逆に言えば、圧倒的な首位です。翻訳業界では超大企業でても、他業種の売上高と比較するとさほどではなく、規模感が見えてきます。以上、日本企業の調査方法を2パターンご紹介しました。
2. 海外企業:Wall Street Journal(無料)
トヨタ自動車とファイザー、どちらの時価総額が大きいかご存じですか?
Wall Street Journalのウェブサイトは情報の宝庫です。しかも無料。右上の虫眼鏡マークで企業名を入力します。
次に、上場している市場を選択します(今回はニューヨーク市場「NYSE」)。
じゃ~ん! 情報の宝庫へようこそ。
まずは右上の「3Y」をクリックして過去3年間の株価推移を確認。
コロナ前は35ドル付近だったのが、今では60ドルと倍近く上昇しています。理由はお分かりですね。
・News欄:直近のニュースがずらり。
・Market Cap:Market Caplitalization、つまり時価総額です。BはBillionの略。
ファイザーの時価総額は3,300億ドル=約37兆円。一方、トヨタ自動車は34兆円(2021年12月時点)。
時価総額:ファイザー>トヨタ自動車と分かります。
・COMPETITORS(競合他社):ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの競合他社が勢ぞろい。
P/E (TTM)はPrice-to-earning (Trailing 12 months)の略。過去12か月間で、株価(Price)が純利益(Earnings)の何倍かを示します。この数値が高いほど市場からの評価が高く、競合他社と比較することでその企業の市場評価が垣間見えます。ファイザーとジョンソン・エンド・ジョンソンを比較すると、ファイザーの方が低い評価だと判明します(18倍 vs 25倍)。ちなみに「PFE」はファイザーの銘柄シンボルで、Apple社ならAAPLといった具合です。
OVERVIEWタブだけで最低限の情報は得られますが、PROFILEタブ(企業概要)やFINANCIALSタブ(財務情報)なども充実しています。5分で調べるなら、OVERVIEWタブだけで十分でしょう。
以上、日米を中心に上場企業の客観的な情報源を解説しました。各社の公式ホームページと合わせて読むことで、主観と客観のバランスの取れた企業像が浮かび上がることでしょう。本記事が何かのお役に立てれば嬉しい限りです。