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ESGの潮流:翻訳者としての3つの所感

ESGとは、Environment(環境)、Society(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取った言葉です。最近ニュースで耳にする機会が増えていませんか?

 

今回はESG関連の資料を翻訳してきて感じた所感をまとめたいと思います。

1. ESG投資の急激な拡大

2. ESGのE(環境)以外にも注目が集まってきた

3. 中堅上場企業のホームページで情報不足のケースが多い

 

以前からESG関連の翻訳案件は多かったのですが、コロナ禍で急増しています。その背景には企業を見る目が変わったことがあります。今までは「投資=金儲け」の意識が強かったのですが、連日のように世界の人々が苦しむ姿を見て、「自分だけが良ければいいのか?自分にも何かできないか」と思う人が増えているのでしょう。

1. ESG投資の急激な拡大

企業としても消費者や投資家からの評価を勝ち得るために、ESG情報の開示に力を入れています。事実、投資の世界でもESG投資の規模が急拡大しています。米国では2025年には投資資産全体の半分をESG投資が占めると予想されています(リンクあり:Deloitte社の試算)。先行する欧州は言うまでもなく、日本でも遠くないうちに過半を占めるでしょう。

 企業としてはその巨大なESGマネーを取り込むべく、ESG情報の開示に躍起になっています。従来は財務諸表に表れる利益などが重視されてきましたが、非財務情報(財務諸表に表れない数字)も重要な判断材料になっています。統合報告書やCSR報告書を発行して非財務諸表の開示を充実させる企業は多いです。

 現在、欧州が中心になって非財務情報の基準を策定する動きが活発に行われており、脱炭素などで欧州企業に都合の良い基準になる懸念があります。たとえば、ガソリンと電気を併用するハイブリッド車もESGの理念にかなっているはずですが、「ガソリン=悪」と見なされがちです。日本政府や企業には日本の事情を踏まえたルール作りに大きく関与しつつ、EV車をはじめとする開発を加速することを期待します。

 

2. ESGのE(環境)以外にも注目が集まってきた

今まではESGのE(環境)ばかり着目されてきましたが、S(社会)やG(ガバナンス/企業統治)も重視され始めています。コロナ禍で自分のいる「社会」を意識せざるを得ない状況にあることが一因でしょう。「ガバナンス/企業統治」については、取締役などは従来から投資の根幹に関わるので重視されてきましたが、最近は社外取締役の割合増やダイバーシティ(女性の登用など)が求められています。

 実際、IR(投資家向け情報)資料を翻訳していると、社外取締役や女性役員が単なる数合わせなのか、本当に機能しているのか、疑問に思うこともあります。ただ、外部から知る術はないですし、少なくともCO2の排出量削減ばかりCSR報告書でアピールしていた昔よりは、多様な側面に注力されて良くなったと思います。

 

3. 中堅上場企業のホームページで情報不足のケースが多い

中堅企業の多くで開示情報が相当少ない印象があります。最新の財務情報が掲載されていない。英語版ホームページが簡素すぎる、場合によっては無い。せっかく環境に優しく社会に貢献する事業を展開しているのに、それが伝わらないのは残念です。モッタイナイ。日本には隠れた中堅の優良企業が少なくありません。

 また、大手の上場企業でも全書類を英訳しているケースは稀で、海外投資家としては日本語でしか手に入らない資料が存在するがゆえに、企業価値を割り引いて評価しているのではないでしょうか。仮に、私がベトナム企業に投資するとして、ベトナム語の全資料の半分も英文や日本文で入手できなければ、投資を躊躇するでしょう。

 

以上、翻訳していて感じた所感をまとめてみました。一昔前、当事務所の代表はMBAの修士論文でCSRと財務パフォーマンスの相関・回帰分析について研究しました。当時の結論は、CSR(企業の社会的責任)に積極的な企業は短期的に財務パフォーマンスが芳しくないという残念な結果でした。ただ、「短期的に」というのが肝です。その後、長期的にはGAFAMに代表されるようなESG評価の高い企業が好業績をたたき出すことになりました。とはいえ、これにもカラクリはあるわけで、因果関係はまだまだ謎に包まれています。

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